売買契約

マンション売買を途中キャンセルする場合/手付解除期日、住宅ローン特約とは

家やマンションを売り買いするのは、とても高額であり、多くの方にとって人生で1度か2度の経験でしょう。

一大決心をして「買う!/売る!」と踏み切ったものの、少なからず途中キャンセルしたいというケースがあります。

買主が「やっぱり買うのを辞める」という場合もあれば、売主が「やっぱり売るの辞めた」という場合もあり、買主都合・売主都合のキャンセルどちらも起こり得ます。

今回はそんな不動産売買の途中キャンセルについて解説していきます。

不動産売買、キャンセルできるか

そもそも不動産売買はキャンセルできるのか?

結論から言うと、不動産売買のキャンセルは可能です。しかも、いつでも。

不動産とはいえ家やマンションも、通常のモノ(日用品や生命保険など)と同様、途中でキャンセルできます。法律の宅地建物取引業法(宅建業法)でも認められています。

ただし、原則的には「いつでもキャンセル可能」ですが、キャンセルするタイミングによって違約金などのペナルティが発生しますので、キャンセルを実行する際は十分な注意が必要です。

ちなみに売主が宅建業者(個人ではなくハウスメーカーなど)である場合は、特定の要件を満たせばクーリングオフ制度が認められています。

不動産のクーリングオフ制度については以下記事で詳しくまとめています。

不動産クーリングオフの条件と注意点

 

キャンセルのタイミングと違約金

不動産売買においても原則的には「いつでもキャンセル可能」ですが、キャンセルするタイミングによって違約金が発生します。

キャンセルのタイミングとしては、大きく以下の3種類に分けられます。

  • 売買契約書の締結前
  • 売買契約書の締結~手付解除期日
  • 手付解除期日~決済・引き渡し日

です。

売買契約書の締結前

不動産の売買は「売買契約書」を締結することによって確定します。

売買契約書を締結する前のキャンセルであれば、違約金などのペナルティが発生することはありません。

売主がキャンセルする場合

売主は売買契約書の締結前であれば、いつでもキャンセル可能です。

不動産会社に物件査定してもらうために我が家まで訪問してきてもらったとしても、キャンセルできます。不動産会社と媒介契約を結び、すでに物件売り出しが始まっていたとしても、いつでもこちらから途中キャンセルしてしまっても構いません。

ただし売り出しが始まっている場合、広告宣伝費(インターネット広告や専門誌への掲載費用)などの実費のみ不動産会社から請求されることはありますが、不動産会社が違約金やその他のペナルティを求めることはできません。

買主がキャンセルする場合

買主(厳密にはこの時点では購入予定者)がキャンセルする場合も同様に、いつでもキャンセル可能です。

興味を持ってもらって内覧もしてくれた、価格交渉の結果、前向きな返事ももらえた…という場合でも、売買契約書の締結前であれば、無条件でキャンセルできます。

買主都合でキャンセルされてしまった場合でも、売主は違約金や損害賠償請求はできません。売主としては買主の気が変わらぬように、スピーディで丁寧な対応を心掛けておきたいものです。

 

売買契約書の締結~手付解除期日

売買契約書を締結した後にキャンセルする場合は、そのキャンセルを申し出た側にペナルティが発生します。

手付解除期日までであれば、所定の違約金を支払うことでキャンセルできますが、高額な支払いが必要です。

※手付解除日とは

手付解除期日とは、売買契約後だとしても所定の違約金を支払うことで契約解除を認めている期日のことです。一般的には売買契約書の締結日から1~2週間ほどを設定します。

売買契約書締結~手付解除期日までなら、以下の方法でキャンセル可能です。

売主がキャンセルする場合:手付倍返し

売主がキャンセルする場合、買主(購入予定者)から受け取った手付金の倍額(2倍)を支払うこと(手付倍返し)でキャンセルできます。

売買契約書の締結時に手付金として受け取ったお金(一般的には売買金額の10%前後)をそのまま買主に返還するだけではなく、受け取った同額を上乗せして、はじめてキャンセルが認められます。

売買金額が3,000万円だった場合、買主から手付金として300万円を受け取ったとしましょう。この後に売主都合で売却キャンセルするのであれば、600万円(300万円×2倍)を買主に支払わなくてはなりません。

この場合600万円支払っていますが、実質的な負担額は300万円です(もう半分の300万円はすでに買主から受け取っているため)。

安易に途中キャンセルすると、売買代金を得られないだけでなく、大きな損失が生じてしまいます。本当に売却していいのか、十分な注意が必要です。

買主がキャンセルする場合:手付放棄

買主(購入予定者)がキャンセルする場合、すでに支払った手付金を全額放棄すること(手付放棄)で、キャンセル可能になります。

つまり、売買契約書の締結時に手付金として支払ったお金(売買金額の10%前後)をそのまま全部あげるから、購入を辞退するということです。

売買金額が3,000万円だった場合、手付放棄するなら300万円が必要になります。

300万もの大金を支払っても手元には何も残らない、ただ無駄に300万円払っただけという状態になるので、買主も売買契約締結時には十分な注意が必要です。

 

手付解除期日~決済・引き渡し日前

手付解除期日を過ぎてからのキャンセルについては、違約金ペナルティが発生します。

売却物件の決済(支払い)が行われる前、もしくは物件の引き渡し日前までがキャンセル可能です。

決済・引き渡し日を迎えてしまうと、どんなに違約金を支払ってもいかなる理由でもキャンセルできなくなります。

売主/買主がキャンセルする場合

手付解除期日~決済・引き渡し日のタイミングでは、売主/買主ともにキャンセルの条件・内容は同じです。

手付解除期日を過ぎてからキャンセルする場合は、キャンセルを申し出た側が、違約金を支払うことでキャンセルできます。

違約金(損害賠償金額)は、売買契約時に書面にて同意・明記しておくことが一般的で、おおよそ売買代金の20%前後を設定します。

たとえば売買額が3,000万円だった場合は、どんなに損害倍書請求を求めようとも600万円ということです。600万円を支払えばキャンセルできます。

あらかじめ違約金額を決めておくことで、万が一、相手にキャンセルされたとしても設定された違約金額以上は請求できなくなりますし、反対に自分がキャンセルしたとしても請求されません。

お金を支払うことで一応はキャンセルできるのですが、この段階・タイミングでのキャンセルは、キャンセルされたが側が多大な損害を受けてしまう可能性があります。

余程のことがない限り、キャンセルするなら少しでも早い段階で踏み切ってください。

 

キャンセル時の不動産会社への手数料

売主が不動産仲介会社へ支払う「仲介手数料」は、売買契約書が締結されると発生します。

売買契約書の締結以降にキャンセルされたとしても、仲介手数料の支払い義務は残ります。

上述してきました通り、売買契約書の締結前であれば仲介手数料も違約金も発生することはありませんが(広告宣伝費のみ請求されることはあります)、締結後はいかなる理由であっても、売主は不動産会社へ仲介手数料を支払わなければなりません。

仲介手数料額については、おおよその目安として売買金額の3.5%程度です。途中キャンセルしたからと言って減額になることもありません。

3,000万円のマンションだった場合、仲介手数料は1,036,800円にもなります。不動産会社によって多少の違いはあれど、大きな金額になることは間違いありません。

仲介手数料については、以下記事で詳しく解説しています。

不動産の仲介手数料とは?いくら支払うのか?

 

【キャンセルの例外】住宅ローン特約

キャンセル時の違約金のタイミングや内容について、例外があり、「住宅ローン特約」といいます。

住宅ローンを特約とは、買主が住宅ローンの審査に落ちた際に、売買契約を白紙に戻す(無条件で不成立にする)という特別な約束です。

住宅ローン特約は売買契約書に盛り込んでおくことが一般的であり、万が一の事態に備え、買主(購入予定者)を守ります。

買主としては購入する気満々で、売買契約書を結んだものの、住宅ローンの審査に落ちてしまうケースがあります。住宅ローンを利用できなければ事実上は購入不可能ということになってしまいます。

この場合、売買契約書の締結時に支払っていた手付金(売買金額の10%前後)は、手付放棄する必要はなく、売主から全額返還されます。

また住宅ローン特約が利用される(売買契約が白紙になる)場合、売主の仲介手数料支払い義務も白紙に戻ります。

つまり「買主が住宅ローン審査に落ちる」という住宅ローン特約では、仲介手数料も消滅します。すでに支払ってしまっている場合は、全額返還されます。売主買主ともにペナルティ無しで契約が不成立になります。

一方的な買主都合か売主都合のキャンセルの場合は、上述してきました通り、売買契約締結時に発生した不動産会社への手数料は支払う必要があります。

 

まとめ

売主の都合による売買契約書締結後のキャンセルは、仲介手数料だけでなく、買主への手付金倍返しなどの高額な支払いが生じます。

金銭的なダメージを受けるだけでなく、買主や不動産会社からの信用も多少なりとも失ってしまう可能性があることを忘れてはいけません。

身勝手なキャンセルが続くと、いざ本気で売却しようとしても、不動産会社側が真剣に応対してくれないリスクもあります。

家やマンションの売買は、人生を左右しかねないほどの大きな影響力があります。売却決意する際は、十分に時間をかけ慎重に判断してください。

※追記】 将来的な売却を考えているので、マンションを一括査定してみたところ、業者によって600万円も差がありました。まずは客観的な価値(価格)を知ることから始めてみてください。

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